ボーダーコリーの突発性虚脱

今年は例年より暑くなるのが早いかもしれません。

昨年から話題にのぼることが多くなったBCC(ボーダーコリー突発性虚脱)が見られるようになる時期でもあります。
ボーダーコリーの飼い主さんは十分にお気を付け下さい。

1.はじめに


  ボーダーコリーにおける突発性虚脱(以下:BCC)は、気温が高い時に激しい運動によって誘発される神経系の障害であると考えられているが、詳細は不明である。

BCCは、北米、ヨーロッパ、オーストラリアなどで確認されており、
安静時には正常であるものの、5~15分の運動後にふらつきや虚脱や神経障害を思わせる症状を呈する。ほぼ全ての症例で30分以内に回復する。未だ日本においては、この疾患に対しての報告はなくBCCについては情報もほとんどない。

一昨年から昨年に掛けてボーダーコリーの飼い主さんにアンケートを実施
回答が得られたボーダーコリーは199頭
BCCの症状を発症したことがあるボーダーコリーは、18.37%であった。また、性差は認められなかった。

「BCC症状が最初に発生した時期」
・1歳までに発症が確認できた個体は13.89%
・ 1~2歳が38.89%
・ 2~3歳が30.56%
・ 3~4歳が13.89%
・ それ以降の年齢が2.78%

症状については、回答の83.33%で「まっすぐ歩けない」「ふらつく」という言葉が含まれていた 。
また、運動中に発症したという回答も47.22%であり、しばらくすると元に戻ったという回答も41.67%で得られた。

発症時期は初夏から秋にかけての発症が36.11%
冬季での発症は確認されなかった

発症に関しては、暑い時期に多く、運動中にその多くが発症していることから、気温と運動の二つは発症の引き金になる可能性が高いと考えられた。また発症後には、そのほとんどでしばらくすると元に戻るといったことから、獣医師が診察をする時にはその症状から回復していることが多いと考えられる。

BCCの発症を防ぐには、暑い時期に過度な運動を避けるなどで対処するしかないのが現状である。

詳しく知りたい方は以下をご覧下さい。

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2018年日本獣医学会近畿地区三学会における発表より

『日本におけるボーダーコリーの突発性虚脱の発生状況についての調査報告』

今本成樹  

犬の遺伝病ネットワーク代表

新庄動物病院(奈良県)

1.はじめに:ボーダーコリーにおける突発性虚脱(以下:BCC)は、気温が高い時に激しい運動によって誘発される神経系の障害であると考えられているが、詳細は不明である。BCCは、北米、ヨーロッパ、オーストラリアなどで確認されており、安静時には正常であるものの、5~15分の運動後にふらつきや虚脱や神経障害を思わせる症状を呈する。ほぼ全ての症例で30分以内に回復する。未だ日本においては、この疾患に対しての報告はなくBCCについては情報もほとんどない。今回、全国のボーダーコリーの飼い主に対して、国内初の実態調査を実施した。

2.材料および方法:2017年11月から2018年7月の期間にインターネットを用いてボーダーコリーの飼い主に対して、アンケートを実施した。アンケートの回答については、同一人物からの大量投票がないよう登録制とし、回答先のIPアドレスを記録した。アンケートの最初にBCCの概要を記述し、それ以降で、回答者の居住地域、飼育しているボーダーコリーの性別、BCCの症状の有無、症状が出た場合の発生時期、症状が出た症例ではどのような症状であったかを記述欄を設けた。

3.結果:回答が得られたボーダーコリーは199頭であった。BCCの症状を発症したことがあるボーダーコリーは、18.37%であった。また、性差は認められなかった。「BCC症状が最初に発生した時期」については、1歳までに発症が確認できた個体は13.89%、1~2歳が38.89%、2~3歳が30.56%、3~4歳が13.89%、それ以降の年齢が2.78%であった。症状については、回答の83.33%で「まっすぐ歩けない」「ふらつく」という言葉が含まれていた。また、運動中に発症したという回答も47.22%であり、しばらくすると元に戻ったという回答も41.67%で得られた。発症時期は初夏から秋にかけての発症が36.11%で得られた。また、冬季での発症は確認されなかった。

4.考察:今回、日本国内においてボーダーコリーの飼い主に対して調査を実施したところ、18.37%のボーダーコリーの突発性虚脱に似たような症状を示す犬がいるとの結果になった。ボーダーコリーにおける突発性虚脱は、日本にも存在している可能性が濃厚となった。国内のボーダーコリーでは、暑い時期に運動時にふらつきが確認された個体では、BCCを鑑別診断に入れる必要があると考えられる結果が示された。

成績

回答数と回答地域:質問1の「ボーダーコリーを飼育していますか?」に「はい。」と回答されたのは199頭であった。「いいえ。」との回答はなかった。また、同一のIPアドレスからの投票も認められなかった。質問2で回答された方の地域は、関東が最も多く36.68%(73頭)、以下は近畿20.10%(40頭)、北海道14.57%(29頭)、中部20頭(10.05%)、東北5.53%(11頭)北信越4.52%(9頭)、九州3.52%(7頭)、中国2.51%(5頭)、四国2.51%(5頭)であった。

回答した犬の性別と生活環境:質問3では、雄22.45%(44頭)、去勢雄30.61%(60頭)、雌22.51%(50頭)、避妊雌21.43%(42頭)であった。質問4において199頭の生活環境を調べたところ、大会に出てドッグスポーツをやっている犬が32.66%(65頭)、空き地やドッグランで走らせている犬が38.19%(76頭)、散歩程度の運動の犬が18.59%(37頭)、過去にドッグスポーツをしていたが今は引退している犬が8.54%(17頭)、ほとんど運動をしないという犬は2.01%(4頭)であった。

BCCの症状の有無と初発の時期:質問5のBCCに似た症状を自分の犬で見たことがあるかどうかについては、196頭分の回答があり、「ある」との回答が18.37%(36頭)であり、炎天下で15分以上は知ってもフラつくことはないという犬が34.69%(68頭)、気にしたことがなかったという回答は38.78%(76頭)、激しい運動をしたことがないのでわからないという回答は8.16%(16頭)、未回答が3頭であった。質問6の「BCC症状が最初に発生した時期」についての質問に対しては、その症状を見た36頭から回答をいただき1歳までに症状を示したのが13.89%(5頭)、1~2歳が38.89%(14頭)、2~3歳が30.56%(11頭)、3~4歳が13.89%(5頭)、それ以降の年齢が2.78%(1頭)であった。3歳までの発症が83.33%であった。

BCCの飼い主から見た症状:質問7の飼い主から見た症状の記載から、複数回答があったキーワードを選び出し集計したものを、表2に抜粋した。回答数は36頭であった。「まっすぐ歩けない」「フラつく」という言葉が含まれていたのが30件(83.33%)で確認された。「運動中に発症した」という言葉が含まれていたものが17件(47.22%)、「しばらくすると元に戻った」という言葉が含まれていたものが15件(41.67%)、「初夏から秋」や「暑い時期」での発症ということが13頭(36.11%)に記載されていた。その他の複数の記述があった結果については、表2にまとめた。

考察

今回のアンケート調査では、BCCとも考えられる症状を示した犬が約18%存在した。また、高温と運動という二つの条件がそろうことで発症をしている可能性が高く、このことからも日本においてBCCは存在する可能性が高いと考えられた。表1に示したようにBCCの発症は3歳以下が80%を超えており比較的若い頃からの発症が多かった。海外における調査においても高温や過剰な運動が、BCCのリスクを高めた可能性が示唆されている[1]が、日本においても同様のことを考える必要がある。今回の調査結果でも「まっすぐ歩けない」「フラつく」という症状が目撃されている発症が83.33%であり、発症に関しては、暑い時期に多く、運動中にその多くが発症していることから、気温と運動の二つは発症の引き金になる可能性が高いと考えられた。また発症後には、そのほとんどでしばらくすると元に戻るといったことから、獣医師が診察をする時にはその症状から回復していることが多いと考えられる。

ボーダーコリーにおいて気温がある程度高く、運動中にふらつきを示した場合においては、BCCを疑う必要があるだろう。BCCは、未だその発生機序が明らかにされていないが、高気温時運動誘発性の虚脱と言い換えることもできるのではないだろうか。今後、BCCの発症のメカニズムや病態の解明が進めば、治療法も見つかるかもしれない。BCCの発症を防ぐには、暑い時期に過度な運動を避けるなどで対処するしかないのが現状である。

引用文献

[1]  Taylor S, Minor K, Shmon CL, Shelton GD, Patterson EE, Mickelson JR:Border Collie Collapse: Owner Survey Results and Veterinary Description of Videotaped Episodes, J Am Anim Hosp Assoc. 52,364-370. (2016)

[2]  Taylor S, Shmon C, Su L, Epp T, Minor K, Mickelson J, Patterson E, Shelton GD:

Evaluation of Dogs with Border Collie Collapse, Including Response to Two Standardized Strenuous Exercise Protocols, J Am Anim Hosp Assoc. 52,281-90. (2016)


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